甲賀勝雄

【甲賀勝雄 略歴・土日画廊コメント】
1943年 福島県生まれ
69年 「美学校」立石鐵臣教場にて細密画ご学ぶ。
師から最も良く学び得た学生として、この年度の特待生となり、次年度の学費免除となる。
70年 同校、加納光於教場にて銅版画を学ぶ。
以後、独学で研鑽を積み、現在に至る。
(アトリエ no.524 10/’70に細密画作品掲載)
美術に対する誠意は揺るぐ事が無く、その制作意欲に止まることがない。
89年 安藤祐氏(美学校一期生)と 二人展(ギャラリー・キゴマ(国立)
94年 腐食 銅版画展 ー行合 の空ー (プラザギャラリー 仙川)
03年  腐食銅版画展 ー版の風景ー(土日画廊)
06年  個展ー夢封じー1996 細密画を中心に(土日画廊)
07年  腐食銅版画展(土日画廊)
銅版画は腐食されて版を造るので、「腐食銅版画」というのは妙に思われるかもしれません。それを敢えてそう呼ぶ理由は、甲賀さんの制作過程に有ります。通常、防食剤は銅版の腐食液を浸透させたくない部分に塗るのですが甲賀さんの場合は、その防食剤に液が微妙に浸透する独特な加工を施し、その濃度と、腐食液に浸けた時間とのバランスで銅板表面に、変化に富んだ傷を浸けます。いはば偶然が生み出す絵とも言えます。防食剤の配置と腐食の時間と、そこに温度や湿度という要因が加わり、作家の絶妙な「感」が働くのです。「腐食で描く」というような気持なのです。そのようにして生まれてくる作品は、観詰めていると、妙に懐かしい風景に出会ったような感覚になります。作家自身は、風景を表現しようと目論んでいるわけではなく、むしろ情緒的な要素を避け、より純粋な形態表現を目指して来たと、私は理解しています。 しかし、観る側には、気温とか静寂感とか、皮膚を通して感覚を刺激されます。作者の意図と反する、このような現象がわたしには興味深く思われます。
土日画廊 板橋正子