佐々木良枝 展 2014年4月(リトグラフ)
一枚だけの「版画」ー 心の風景を求めて ー
版画といえばその中心になる特徴は同じ作品が”複数”制作されるということだろう。しかし、佐々木さんは一枚しか創らない。というより、1枚を創る。
制作は、ある程度のイメージから始まる。
そこに乗せる形態と色を決め、版を作り、プレスしてインクを画面に定着させてゆく。結果を
確認して次に重ねる版を決め、再び画面に色を置いて行く。
それを何度も繰り返し、蛇行しながらやがて最期の版を刷り上げた時に作家の求めるイメージに到達する。
佐々木さんの作品は「色彩が語る詩(うた)」と捉えることもできる。感覚と思考のせめぎあいの中から、線や形態を借りて決定される版を重ねる度に、見えないものが色彩によって視覚化されて行く。吟味され選出された色インク達は、科学的な物質感を主張しながらも画面を構成する一員として居場所を定め、時には重層に絡み響き合い、時には単色そのものの持つ詩がささやかれ、佐々木さんの風景を彩る。
作業をしながら版を決めて行きイメージを求めて行くという方法は、版画制作に於ける
佐々木さんの大きな特徴です。気持ちは筆を版やプレス機に置き換えて「描く」ということ
で、それはどちらかというと絵画に近い気分があるのかも知れない。となると、同じ絵を複数
刷るということの方が、佐々木さんにとっては不自然なことになるのでしょう。
「一枚だけの版画」の理由だと解釈しています。
一版一版、プレス機の台から用紙をめくり上げる時の期待と不安は版画制作を体験した人ならその感覚はご理解頂けると思う。版を決定してインクを盛り、紙面にプレスしてしまえば画面は
一時的にではあるにしても決定されてしまう。その決断に対する自分への責任と、めくった時の何が新たに生まれてくるのかという期待感を、失敗や成功という山や谷があるにしろこの「快感」を、佐々木さんは何度味わったことだろう。
結果、作品は心の風景を見つけた時の喜びの詩(うた)なのである。
佐々木作品は色彩豊かで、快活で楽しい。
観ていると元気がでる、という人もいる。それは美術に対して良いことだと思うし作品にたいする大いなる褒め言葉だと思う。(土日画廊 板橋)
佐々木良枝 略歴
大分県出身、東京都在住
長い年月、小学校教諭を勤めつつ「美学校」(神田神保町)でリトグラフを学ぶ。
現在同校のリトグラフ教場の講師。また、NPO法人 美学校AESS「子供のアトリエ」開講。
作品発表
1983年 ” ARTRANCE GIGMENTA “ AXES GALLERY(六本木)
1984年 2月 個展 画廊春秋(銀座)
” 30 Lithograph ” Gallery Tamaya
7月 個展 えだ画廊(大分)
1985年 ” Lithograph Review 44 “ 大阪フォルム画廊(銀座)
1986年 2月 個展 画廊春秋(銀座)
” Lithograph Review 44 “ AXES GALLERY(六本木)
8月 個展 えだ画廊(大分)
1987年 ” Lithograph Review 44 “ Maison des Beaux Art. Paris
1988年 5月 山本英夫・佐々木良枝 二人展 画廊春秋(銀座)
1989年 4月 個展 画廊春秋(銀座)
8月 個展 えだ画廊(大分)
1990年 8月 詩画展(佐々木均太郎 詩・佐々木良枝 絵)えだ画廊(大分)
1991年 2月 個展 画廊春秋(銀座)
3月 ” Lithograph Review 44 “ 町田市立国際版画美術館
” Lithograph Review 44 “ JAPAN CULTURE CENTER
8月 ” Lithograph Review 44 “ GEOAGE WASHINGTON UNIVERSITY GALLERY
12月 個展 Washington Hotels ART SALON(大分)
1992年 6月 個展 ぎゃらりいセンターポイント(銀座)
8月 個展 えだ画廊(大分)
1993年10月 個展 ぎゃらりいセンターポイント(銀座)
1995年 8月 ” 秋・小品展” 浅川コレクションを中心に(足利美術館)
1996年 5月 個展 ぎゃらりいセンターポイント(銀座)
12月 個展 えだ画廊(大分)
1997年 9月 個展 高原イラスト館八ヶ岳(山梨)
1998年11月 個展 ぎゃらりいセンターポイント(銀座)
1999年 7月 テーマ〈CAUHISSENTENT〉(いびつ)展 ぎゃらりいセンターポイント
8月 個展 えだ画廊(大分)
2002年 7月 テーマ〈LIAISON〉による小品展 ぎゃらりいセンターポイント
9月 個展 鹿島労災病院ロビー(茨城)
2003年 6月 Baum-Kuchen 展 ギャラリーPROMO-ARTE(表参道)
7月 個展 土日画廊(中野・新井薬師前)
2004年 5月~毎年参加、現在に至る グループ展「結」草加アスコギャラリー(草加)
11月 Novemver drops 2004年 ギャラリー悠玄(銀座)
2005年 4月 Baum 展 ギャラリーStudio Zone (高円寺)
2006年 4月 グループ展 バーム展 GALLERY ES (表参道)
4月 個展(水彩画)小品展 蘭伽洞(亀有)
2007年 1月 個展(水彩画)小品展 えだ画廊(大分)
5月 佐々木良枝 水彩画・太田和孝 陶磁器 蔵ギャラリー(別府)
8月 個展 おおのギャラリー(別府)
12月 個展(水彩画)小品展 蘭伽洞(亀有)
2008年 4月 グループ展 美学校gigmenta 2008 ギャラリー アートコンプレックスセンター(四谷三丁目)
4月 グループ展 ギャラリーおおの(別府)
5月 個展(水彩画)小品展 豆屋珈琲(見沼)
2009年 1月 蔵ギャラリーしばた 30周年記念絵画小品展(別府)
3月 美学校 ANNUAL REPORT 2009 ギャラリー アートコンプレックスセンター(四谷三丁目)
12月 グループ展 おおのギャラリー(別府)
2010年 1月 グループ展 ギャラリー悠玄 (銀座)
3月・4月 グループ展 おおのギャラリー(別府)
8月 個展 えだ画廊(大分)
2011年11月 個展 蔵ギャラリーしばた(別府)
2012年 1月 グループ展 おおのギャラリー(別府)
8月 グループ展 ギャラリー悠玄(銀座)
2013年 3月 日韓国際版画展 ギャラリー鴻(蒲田)
7月 個展 HIGURE17-15cas contemporary art studio(日暮里)
2014年 4月 個展 土日画廊(中野・新井薬師前)