野島美穂 展      

【 野島美穂 展 「月の夜に」】

2025年5月15日(木)-6月1日(日)
open 木 金 土 日 12:00-19:00
close 月火水
作家の在廊は画廊までお問い合わせください。
展示内容:箔を使った古典技法で描かれた絵画16点 他。
野島美穂インスタグラム

「月の夜に」混合技法 65x53cm

「波もくだけて」65x53cm

 

【作者コメント】

「素足では歩けないほど熱い砂浜の眩しさや乱反射する風に揺れる波、盛り上がっては砕け
落ちる白い泡、幼少の頃に刻まれた海辺の強い光と水の記憶が、箔などの光る素材や水と油
を乳化させるメジウムを選ばせているように思います。ひとつひとつ工程を重ねて支持体から
作っていく古典技法は、深い集中と瞑想に私を誘い、さまざまな未知なるイメージの受け皿と
なってくれます。
個展が終わる頃には梅仕事の季節。ここ数年実のなるものが不作とのことですが、幸い毎年
梅干し用に分けていただく友人宅の梅は、今年もさほど変わらず実っている様子。梅干し作り
は祖母との思い出でもあり、ひとつひとつを手順通りに進めていくと、いつの間にか、あたた
かな祖母の陽だまりに包まれているのです。」野島美穂

 

【野島美穂 略歴に代えて】

画面の中の独特な形や色彩、特に ”ひかりあるいは輝き” は野島作品の特徴と言えるでしょう。
この幻想的とも言える作風が作者にとって単なる空想ではなく、かなりリアルに心に現れる
イメージのようです。野島さんは福島県いわき市の海に近い環境で生まれ育ちました。
大気や光や水、風や土そして生き物たちは幼少期の感性を育み、地球、宇宙、生命むろん自分自身
も含めて全て自然は一体、という思いが心に刻み込まれたようです。画家の身体・精神を透過する
この自然観は制作の重要なテーマのひとつとなり、豊かなイメージをもたらしています。時にユニ
ーク、時にユーモラスであったり美しくもあり、奇妙な生命体を連想させることもあります。
描画素材の選択も大事な制作の要素と位置付けています。素材とイメージとの繰り返しの対話は
画家自身の意識を覚醒し、作品の内容を一層深めると言います。
今回の展示作品は、箔を使った古典技法で描かれています。

絵画制作に必要な素材の扱いは必要に応じて他者に学ぶことはありましたが、基本的には独学で
試行錯誤しながら描いてきました。もし「師」と呼べる何かがあるとしたら、それは自然からの
メッセージに加えて日々の生活から得られる体験でしょう。特に台所仕事、中でも料理の手順は
制作と重なるところがあり、アイディアをくれると。

自力と他力を頼りに時をかけて丁寧に育てあげられた作品たちです。

(2025.5 画廊主)