渡辺逸郎展

「水の上に水」 660x480mm 透明水彩

「水の上に水」
660x480mm 透明水彩

渡辺ドローイング

撮影:廣澤章光

渡辺逸郎(1948~2012)
渡辺逸郎さんは美学校・細密画教場で長い間後進の指導にあたられ、その一方で独自の世界観をもって表現者としても制作・発表をしてきました。そして惜しくも2012年に逝去され、多くの作品を残されました。
今回の展示は約30年間の作家活動の中から後半のシリーズ「水の上に水」7点と人体のドローイング15点で構成いたします。
”水”は渡辺さんにとりましてある時期からライフワークのように関わってきたテーマのようですが、特にこのシリーズではそれまでの多様だった画材を透明水彩絵具に絞り、色数もおさえたシンプルな画面になりました。水分を含んだ筆の運びは感情を押さえるかのように穏やかに繰り返され、重なり合う透明な絵具が美しく響きあっています。渡辺さんはこのシリーズを、実験でもするかのように繰り返し描いています。
ドローイングはいつ頃のものか解りません。紙面からふらりと現れ、また紙の中へ沈み込もうとするような、靄がかかったような人体ですが、モデルを捉えようとする眼と描く指先が繋がっているのかとも感じさせる確かさがあります。
渡辺さんの個展は2002年以来2回目ですが、この15年の歳月を考えると感慨深いものがあります。
一生を美術に捧げた画家のほんの一こまですが是非ご高覧頂きたくご案内させていただきます。